本の感想 

王様と私
ハーバート・ブレスリン&アン・ミジェット著 集英社 2006年

3大テノールのひとりルチアーノ・パヴァロッティ。
そのマネージャーだったブレスリンが自分のこと、ルチアーノのことを「修正なしで公開する」。

本が出たのは、ブレスリンが彼のマネージャーを辞めた後。原著は2004年に出ていて、パヴァロッティは2007年に亡くなった。トリノ・オリンピックは 2006年で、開会式でパヴァロッティが「誰も寝てはならぬ」を歌ったのね。なるほど……。

書名の「王様」はもちろんパヴァロッティのこと。怒鳴りまくったり(そういうときも華麗な声なんだろうか?)、公演をキャンセルしたり、非難がましかった り、ケチだったり、すごい執着があったり、ころころと気を変えたり、「なんでも知って」いたり……。

それを「人間的な」と評する人もいるけど、そばにいたらたまったもんじゃないよな〜。スケールは違うけど、似た人を知ってるし。

王様……うん、王様(キング・オブ・ハイCともかかってるんだろうが)、というより傷ついたインナーチャイルドがいっぱいいたんだろうな〜〜。名声があっ て、お金があって、わがままが通って、多数のお付きの者にかしずかれて、なのに、幸せそうじゃない。素敵な歌を歌えるのに。

でもまぁ、ときどき差し挟まれているいろんな人のインタビューを見ると、著者も相当な曲者らしいとわかるけど。このインタビューはいきなり違う世界を見せ てくれるから秀逸だな。

最後に二人が会ったとき、ハーバートが「幸せかい?」と尋ねる。「とっても幸せだよ」と王様は答える。「そんな風には見えないけど」とマネージャーは反論 する。

でも、ハーバート。本の別の所に書いてるじゃない。イタリア人はあからさまにものを言わない、って。「やるとも、もちろんさ」が「ノー」で、「いやだよ、 そんなもの」が「イエス」だって。

複雑な言葉、複雑な人間はいろんなものが重くなって辛そう。シンプルなのがいいな……。

でも、ルチアーノとハーバートが生き様を見せてくれたから、いっそうハッキリわかったんだな。ありがとう。(2008.2.2)

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