本の感想 

小説チャイコフスキー
クラウス・マン著 音楽之友社 1972年

どんな人か知らないので読んでみた。
「白鳥の湖」とか「クルミ割り人形」とか、曲はわりと知っているのにね。

1840年生まれ。クラシックの作曲家=すご〜く昔の人、と思いこんでるけど、わたしより120年前に生まれただけか。なんだ、ついこの前だ。

ブラームスと顔を合わせたり、マーラーにオケの練習を任せたり、グリーグ夫妻とおしゃべりをしたりする。ハンスリックにけなされたり、ハンス・フォン・ ビューローと会って「老けたなぁ」と思ったり。ふ〜ん、そういう時代のひとなのか。わたしの好きなブルックナーとは会わなかったのかしら……。

ピヨートル・イリイチはだれとも仲よくし、だれからも愛され、大事にされた。みんながかれの才能を信 じ、かれの誠実な心をほめた。それでも、ときとしてかれは、親しい友のにぎやかな集まりの中で、言いようもなく淋しくなり、しきりに願うことがあった、ど こかまったく違うところに行ってしまいたい、どこか違うところに――いちばんいいのは、どこにもいなくなってしまうことだが――ここにだけはいたくない、 と。

それ、わかるような気がする。彼もそうだったのか。わたしにもそういう思い、ある。
日本人はチャイコが好きといわれる。アメリカ人も好きなんじゃないかと思う。普段から表立って口に出す人は少ないかも知れないけど、似たような思いの人、 多いのかしら。

彼は神は厳しい方、遠く離れた方と感じている。この時代ならもちろんそうだろう。そうじゃない、と教えてくれる人はそんなにいなかった。

人目や評判もとても気にしている。そういうことが大事だって、古今東西、ずっと思わされてきたものね。

一世紀以上がたって、そうじゃないかもよ、と言う人が出てきた。少しずつ、その考え方が広がっていくだろう。いま、時代の変わり目。ほんと、そうなんだ な。(2008.1.25)

本 棚に戻る ほーむへ


inserted by FC2 system